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【凱旋門賞】現地の言葉があふれる中、力強い日本語の叫びがいくつも…/現地観戦記

  • 2014年10月07日(火) 10時30分
凱旋門賞観戦記

▲凱旋門賞を連覇したトレヴ(撮影:花岡貴子)


 思い起こせば、ハープスター陣営は凱旋門賞遠征を新潟2歳Sを勝ったあたりから意識していたように思います。初の遠征競馬である新潟2歳Sに参戦したとき、お腹が空いて寝ワラまで食べ出すほど食欲が衰えなかったハープスターに対して松田博師は「これだけ食欲が落ちないなら、世界中どこにいっても大丈夫だな」と大笑いしていました。

“斤量面で凱旋門賞は3歳牝馬が有利”という説。これを実証するには、同時期に行われる日本のGIへの出走を諦めなければいけません。秋華賞やエリザベス女王杯を捨てても獲りにいくというリスクを背負える馬なんて早々にいないでしょう。その馬の走る能力はもちろん、環境への順応性や輸送の克服もすべてクリアする必要があるのですから。

 でも、そのすべてがハープスターにはある。陣営はそれを早くから見込み、じっくりと事を進めてきました。

 凱旋門賞当日、天候は曇り。風が冷たく、かなり肌寒かったです。

 午後4時すぎ。凱旋門賞の前の4レースで、ジャルネ騎手が内から鮮やかに勝ちました。外から勢いよく追い込む馬が目立ったのですが、前から抜け出た馬には敵いませんでした。そのレースで、やはり後ろからでは難しいことを見せつけられ…。少し、嫌な予感がしました。

 そして5レース、凱旋門賞のパドック。3頭ともいつもどおりでしたね。日本馬で最初に馬場入りしたのはゴールドシップ。本馬場入ったところで少しうるさいところを見せていました。でも、その場をまわりながら徐々に落ち着きを取り戻していた様子でした。それに続いて、ジャスタウェイも馬場入り。いつもと変わったところは見受けられませんでした。それからしばらくして、ハープスターが登場。いつもどおり、クビを下げて進む姿。いよいよ、ですね。

凱旋門賞観戦記

▲返し馬を行うハープスター(撮影:花岡貴子)


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▲世界が注目したジャスタウェイ(撮影:高橋正和)


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▲名手を背にどんな競馬を見せるか…ゴールドシップ(撮影:高橋正和)


 ゲートはハープスターが早めに入りましたが、そこから最後にゴールドシップが入るまで、かなり時間がかかっていましたよね。他のレースも同じような感じでしたし、そういうお国柄なのでしょう。そして、スタート。日本馬たちはゆったりとしていました。ゲート内で待たされた影響も少々はあったのではないでしょうか。

 後方2頭がハープスターとゴールドシップ。馬群の中をいくジャスタウェイ。「今年も日本馬は勝てないだろうな」、心の中でそう思ったのは、わたしだけではないと思います。それでもその現実とは裏腹に「なんとか、応援している馬が勝って欲しい」という気持ちは膨らむばかり。

 松田師は戦前「内に入ったところで包まれる。だったら、外から自分の競馬をすればいい」と話していました。だから、道中いったんハープスターを内に入れた川田騎手がどの時点で外に出して追い出すのか、そればかりを気にして見ていました。ゴールドシップを見ながら、その外から追い出したハープスター。そのラストの伸びは、実に素晴らしかった。見ていて、鳥肌が立ちました。

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▲懸命に前を追いかけるハープスター(撮影:高橋正和)


 内を見ると、ジャスタウェイがじりじりと伸びていたけれど、その内から抜け出たトレヴの勢いが明らかに優勢でした。でも、わたしはそれを尻目に、とにかくハープを見ていました。

「来い!」
「頑張れ!」
「川田!」

 現地の言葉があふれるスタンドの中で力強い日本語の叫びをどれだけ聞いたことか…!

 結果、日本の夢はまた持ち越しとなりました。しかし、“斤量面で凱旋門賞は3歳牝馬が有利”という説を日本馬が実証した最初のレースになりました。このような事例の積み重ねの先に、憧れが叶うのではないでしょうか。

 優勝したトレヴは道中はやや力みながらもグッとこらえ、直線入り口で前へ。ラストは実に力強かった。レースの直後、見るからにクタクタになっていましたね。ゆっくりとウイニングランへ向かう姿には、感激! と同時に、これだけタフな競馬をしなければ勝てない凱旋門賞の壁はどれだけ厚いのか。改めて考えさせられました。

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▲トレヴ関係者を称える表彰式(撮影:花岡貴子)


(取材・文:花岡貴子)

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