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圧巻のコースレコードでコパノリッキー/マイルCS南部杯・盛岡

  • 2016年10月11日(火) 18時00分

撮影:高橋正和



今がいちばんの充実期といえるのでは


 もちろんたまたまなのだろうが、盛岡のダートグレードが行われる開催では以前からタイムが出やすい馬場になる印象がある。南部杯のレース前に地元トラックマンに聞いたところ、この日も条件戦で普段より1.5-2秒ほど時計が速くなっていたいう。それにしても、2010年のオーロマイスターによるコースレコードを1秒3も短縮する1分33秒5という決着には驚いた。2001年の武蔵野Sでクロフネが記録したダート1600mの日本レコードにコンマ2秒と迫るタイム。そのときのクロフネは2着のイーグルカフェを9馬身もちぎっていたから能力が断然抜けていたといえる。しかし今回は、勝ったコパノリッキーから1秒1差で5着のレーザーバレットまでが従来のコースレコードを上回るタイムだったので、馬場自体が相当に速かった。

 そしてこの日は内が重く、真ん中あたりから外が軽い馬場。馬場状態の発表は稍重だが、コパノリッキーの田辺騎手の話によると、真ん中あたりが特に湿っていたそうだ。ラチ沿いが重い傾向はマーキュリーCの開催のころからあり、しかしこの開催ではそれがさらに極端になっていた。佐賀や高知などの小回りコースでは、あまり内に密集すると危険がともなうとして、あえてラチ沿いの砂を厚くするということはあるが、コーナーのゆったりした盛岡コースで内を4、5頭分ほども空けて馬群が回ってくるというのは違和感がある。この日、南部杯までに行われたレースを見ていても、最後の直線では馬場の中央から外側を馬群が伸びてきていて、これまでの盛岡ダートコースでは見たことがないような光景だった。

 それにしても盛岡コースは、見た目にはそれほど速いペースに見えなくても、実際に時計を見ると驚くようなハイペースということがある。逃げたのは大外枠から北海道のロイヤルクレスト。ゲートが開いた直後に少し仕掛けただけで、内の馬たちの出方を見ながらすんなりと先頭に立った。手を動かして位置を取りに行ったのは2番手につけたホッコータルマエだけで、それ以外の有力馬は仕掛けていくこともなく追走。タイムが出やすい馬場だったとはいえ、1000m通過58秒0はかなりのハイペースだ。

 勝ったコパノリッキーは、砂を被る心配のない外目の枠に入り、そのため無理せず馬場の軽い3-4分どころを走れたということもあっただろう。レースのラップを前後半で分けると、46秒1-47秒4。コパノリッキーは前半、逃げたロイヤルクレストから3馬身ほどのところを追走しているので、推定で前半の通過は46秒7、後半は46秒8と考えられ、前後半をまったく同じペースで走り切っている。

 コパノリッキーは、こうした一定のペースで、しかもやや厳しいペースで流れたときに強いレースをする。今年これで地方のJpnIを3連勝。かしわ記念では、逃げたソルテを2番手でぴたりと追走し、直線で突き放したというレース。道中は12秒台の一定のペースを刻んで、前半49秒5、後半49秒7という、やはり前後半同じようなラップで押し切った。逃げ馬から半馬身ほどの差での追走だったので、誤差があってもコンマ1秒程度。そして帝王賞では、前半は逃げたクリソライトから2馬身ほどの差の3番手を追走。前半1000m通過が62秒2、後半61秒3。やや後半に寄ったラップだったが、それにしても道中はほとんど12秒台中盤くらいのラップで流れていた。

 GI・3連勝となったコパノリッキーは、これでGI(JpnIも含む)8勝目。依然として馬群に包まれ砂を被ったときどうかという危うさはあるが、パドックやレース中の落ち着きを見ると、今がいちばんの充実期といえるのではないだろうか。ホッコータルマエのGI・10勝という記録更新も見えてきた。

 3連覇を狙ったベストウォーリアは1馬身3/4差で2着。道中はコパノリッキーをピタリとマークして進み、直線ではコパノリッキーの外に持ち出して差し切るかという勢いがあった。ところが相手も止まらず。戦前から言われていたとおり、過去2年と比較して格段にレベルの上がったメンバーということを考えれば、この馬の能力は存分に発揮している。

 ホッコータルマエはベストウォーリアから3馬身差がついて3着。実績を考えれば、なぜ4番人気なの?という感じはあったが、休養明けの成績がよくないということでの評価だったのだろう。ホッコータルマエもコパノリッキーも、マイルから2000mは守備範囲だが、ホッコータルマエはGI・10勝のうち8勝が2000または2100m。対してコパノリッキーは、これでGI・8勝のうち5勝がマイル戦。互いにそれがほんとうに能力を発揮できる距離と思われる。

 アスカノロマンは、ホッコータルマエやコパノリッキーより内枠に入ったので逃げるかとも思われたが、互角のスタートでも控え、コパノリッキーを前に見る位置を追走。直線で一旦はホッコータルマエの内に進路をとろうとしたが、馬場が重かったためか、外に進路を変え、コパノリッキーのうしろを追う形。しかしそこから前2頭ほどの伸びはなかった。フェブラリーS3着など一線級とも差のない競馬をしていることで、ホッコータルマエを上回る3番人気の支持となったのだろう。しかし一線級相手に勝ち切るところまでは、ひとつ大きなカベがあるのかもしれない。

 いつものように中団を追走したレーザーバレットは、4コーナーでぽっかり空いた内を突き、先頭に立ちかける見せ場があった。内を突いたと言ってもラチからは3頭分ほどのところ。前が流れて終いの脚を生かせる展開かにも思えたが、コパノリッキーの上り35秒2を差し切るには35秒を切るような上りが要求され、しかもさすがにこの日、この馬のコース取りでは馬場が重かった。3コーナーからはライズラインに外からフタをされる形で内しか進路がなかったということもあっただろう。さらにもうひとつ。これはあくまでも想像だが、今回ほどではないにしても内が重かったマーキュリーCでユーロビートに騎乗した吉原寛人騎手は、4コーナーで7頭ほどがずらりと並んだ大外を回ることになり、勝ち馬からはやや離されたとはいえ、2着馬からはハナ+1/2馬身差で4着。コース取り次第では2着はあったかというレースだった。そしてそのとき4コーナーで空いた内から突き抜けたのが、田辺騎手のストロングサウザーだった。今回内を選択した吉原騎手には、そのとき悔しい思いをした心理的なことがあったかもしれない。

 勝ったコパノリッキーは、JBCクラシック3連覇を目指すことになるようだ。今年の舞台は川崎。クラシックは2100mで、スプリントが1400m。前述のとおりマイル戦でベストパフォーマンスを発揮するコパノリッキーにとっては、帯に短しタスキに長しという悩ましい選択。地方の小回り2100mは、金沢、川崎で4戦4勝というホッコータルマエがもっとも得意とする舞台。これにダートで負けなし5連勝中というアウォーディーも加わる。予想には悩むことになりそうだ。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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