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【座談会】第3回『裁決やレース解説は元ジョッキーがやるべきか』――「競馬メディアのあり方」を問う

  • 2017年07月03日(月) 12時01分
おじゃ馬します!

▲裁決やレース解説は元ジョッキーがやるべきか、それぞれの見解は?


関係者は必ずしも本音を語れず、取材陣は突っ込んだ質問を避ける。複雑な難しさがついてまわる競馬取材の現場―― 「競馬メディアのあり方」を騎手、トラックマン、評論家が一堂に会して徹底討論するこの企画。今回のテーマは「裁決やレース解説は元ジョッキーがやるべきか」。よく問われるこの問題、はたしてパネリストたちの意見は?

出演:福永祐一(JRA)・柏木集保(日刊競馬)・野元賢一(日経新聞)・吉岡哲哉(競馬ブック)、司会:赤見千尋

(構成:不破由妃子)



(前回のつづき)

現役騎手でも困難 一度観ただけでレース解説をする難しさ


福永 最近は、岡部幸雄さん、安藤勝己さん、佐藤哲三さんなど、元ジョッキーの解説者が増えましたが、みなさんからするとどんな感じですか? やっぱりやりづらいですか?

柏木 下手くそだよ(笑)。だって、ろくなこと言わないんだもん。

福永 厳しいですね(苦笑)。あくまでも個人的な意見ですが、僕は(田原)成貴さんが適任だったんじゃないかと思うんですよ。競馬を面白く伝える技術も持っていた人ですから。

野元 表現力がすごくある人だから。

柏木 そうだね。

福永 安藤さんも佐藤さんも、騎手心理をよく伝えてくれているなと思います。なにしろ安藤さんは現役の頃、「騎手が巧く乗らなきゃ勝てないような馬は大した馬じゃねぇ」って言い切っていた方ですからね(笑)。

野元 だから、ああいう心持ちでレースに臨めていたんでしょうね。

吉岡 われわれ新聞記者の視点というのは、競馬をヨコから見ている感じじゃないですか。でも、ジョッキーはパトロールフィルムのようなタテの視点で見ているので、それがすごく面白いんですよ。一度、グリーンチャンネルの特番で、岡部さんと池添騎手がそれぞれに勝った有馬記念のパトロールフィルムを見ながら解説するという番組があったんですよ。ここがポイントだったとか、このときの隊列がどうでとか、当然ながら私たちが持っていないジョッキー的な視点があって、すごく面白かった。

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▲吉岡「われわれ新聞記者の視点はヨコ、ジョッキーはタテの視点」


野元 今、それを定期的にやっているのが『武豊TV』ですよね。武さんはなんといっても発信力があるし、表現力もすごく豊かな人だから、武さんの視点で解説してくれたらそれはもう勉強になるし、ファンにとっても絶対に面白いですよね。

吉岡 そうそう。武豊さんに限らず、ジョッキーの視点をもっとファンに伝えてあげたら、競馬の見方がグンと広がって、有意義だと思うんですけどね。

福永 去年の凱旋門賞の解説で、改めてユタカさんのすごさがわかりましたね。「エイダンがチームプレイで勝たせた」と、レース後すぐに指摘しましたから。僕もフジテレビで解説をやらせてもらっていたんですけど、マカヒキに注目していたこともあって、一度観ただけでは各馬の細かい動きまで気付けませんでした。さすがだなと思いましたね。

柏木 そうなんだよね。一度しか観られないというのが、一番難しいところ。予想なら何でもいえるんだけど(笑)。

福永 何度かVTRを見返さないと、ポイントはわかりませんからね。

吉岡 おっしゃる通りです。

野元 まだUHFのダイジェストがあった頃、松本憲二さんや柏木さんが解説されていましたよね。ダイジェストなので、時間をおいて収録されていたと思うんですが、いつも「敵わないな」と思って見ていました。

柏木 え? なんか変なこと言ってた?

野元 いえいえ、柏木さんのように長く競馬を見てこられた方が一呼吸置いて解説したら、こんなに納得できるものになるんだなと。

柏木 それは当時、野元さんがまだ幼いファンだったからだよ(笑)。

裁決も元ジョッキーがやるべきか?


吉岡 私たちがやっている夜のダイジェスト番組にジョッキーの方たちにご出演いただいて、そこで解説してもらうっていうのはどうかな?

福永 それもいいと思いますけど、ジョッキーの視点にこだわらず、柏木さんや吉岡さんのような方が「これは騎手の判断ミスですね」とか、もっとズバッと言ってしまってもいいと思うんですけどね。

柏木 そうかぁ…。それにしても、見ている人にとって解説というのは重要なんだね。でも、そういった意味では、元ジョッキーの解説者が増えてきたことはいいことなんじゃない? 今までが少なすぎたから。

福永 どうしても、なり手が限られますからね。裁決にしてもそうなんですよ。

柏木 ああ、裁決も元ジョッキーがやるべきだとか、よく議論になるよね。

福永 「彼らは競馬に乗ったことがないくせに」というジョッキーもいますけど、それはもう仕方がないじゃないですか。実際、ジョッキーを辞めて裁決委員になりたいという人もいないわけですし。だったら、現行のルールのなかでやるしかない。

野元 ジョッキーの立場からすると、裁決にいろいろ言いたくもなるでしょうが、裁決委員の方たちからは「きっちり仕事をしよう」という姿勢はすごく感じます。

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▲福永「騎手から裁決委員になりたいという人もいないなら現行のルールのなかで」野元「裁決委員の方たちは“きっちり仕事をしよう”と」


福永 そうですね。日本の競馬サークルのなかで、一番ストレスを感じているのが裁決委員だと思いますよ。だって、競技者や関係者が、審判に対してこれだけ文句をいうスポーツはほかにはありませんからね(笑)。

赤見 間違いない(笑)。

福永 レッドカードを出されて、「お前、退場や!」って言われてもおかしくないですからね。

柏木 ただね、僕も裁決とは何度もケンカをしたからわかるけど、実際は、引退して酒飲み友達になると、「柏木の言う通りだよ。馬券を買うようになって初めてわかったよ」っていう裁決があまりにも多すぎる。

おじゃ馬します!

▲「僕も裁決とは何度もケンカをしたからわかるけど…」と柏木


野元 裁決以外のJRA職員は、「あんなことできない」ってみんな思ってますからね(苦笑)。

柏木 そうだよね。

赤見 大変なお仕事ですからねぇ。

野元 「もしかして自分の判断で…」というプレッシャーは相当だと思いますよ。裁決委員だって、もとはと言えばサラリーマンですからね。

(次回へつづく)

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東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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