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夏の小休止から一躍、最有力候補の1頭に/ローズS

  • 2017年09月19日(火) 18時00分


◆秋華賞のみならず、繁殖での活躍も期待される

 セントライト記念で、皐月賞馬アルアイン(父ディープインパクト)を並ぶ間もなく差し切ったミッキースワロー(父トーセンホマレボシは、その父ディープインパクトの2年目産駒)は、きわめて強烈だった。ミッキースワローは、15年のキタサンブラックなどと同じように、追加登録で「菊花賞」に挑戦することになった。3歳牡馬陣の菊花賞を目ざすグループはそんなに強力ではない。この上がり馬はたちまち有力候補だろう。

 一方、毎日王冠を予定するソウルスターリング、残念ながら故障して引退のアドマイヤミヤビを欠いてさえ、候補がズラリ並んでいる3歳牝馬の「秋華賞」路線に、また1頭、期待のふくらむ新星が出現した。

 大外からの強襲を決めたラビットラン(父タピット)は、9月3日の「小倉2歳S」を快勝した同じ外国産馬アサクサゲンキ(父ストーミーアトランティック)の1歳上の半姉。2歳秋のダート1400mの新馬を7馬身差で独走のあと、喉頭蓋エントラップメント(EE。のど鳴りとは少し異なる)を発症して少し休んだが、この夏にすっかり復調した。

 初めての芝となった7月の中京1600m(500万下)を1分34秒3(上がり33秒0)で最後方からの直線一気を決めて2勝目を挙げると、今回は「ファンディーナモズカッチャンリスグラシューレーヌミノルミリッサ…」など、秋華賞で高い評価を受けること必至の有力馬を、まとめて差し切ったのである。これは本物だろう。

 暴風雨さえ予測された阪神の芝は「良馬場」。キャリアも浅く、まだ半信半疑の面が多いから、差す一手のラビットランに天も味方したのは確かだが、1分45秒5の好タイムのレース上がりは「34秒9」。ライバルの有力馬もみんな「33〜34秒台」でフィニッシュしている中で、ラビットランは後方から一番外を回って最速の「33秒5」。届いただけでなく、1馬身4分の1も抜き去った。本番の秋華賞では、今回対戦したファンディーナ以下も大きく変わってくるだろう。古馬相手の「クイーンS」をちぎって勝ったアエロリット(父クロフネ)も、紫苑Sを制したディアドラ(父ハービンジャー)もいるが、最有力候補の1頭に加わったのはまちがいない。

重賞レース回顧

大外強襲で有力馬をまとめて差し切ったラビットラン(C)netkeiba.com


 外国産馬ラビットランのファミリーは、ずっと古くから日本へ輸入されて成功することの多い牝系だが、ラビットラン、アサクサゲンキ姉弟が輸入された一番の理由は、快速系の種牡馬ベルトリーニ(その父ダンチヒ)の産駒として輸入した、繁殖牝馬「ドナブリーニ」の成功に大きく関係する。

 輸入されたドナブリーニは、その初子として、種牡馬入り初年度の父ディープインパクトとの間にいきなりドナウブルー(関屋記念など5勝)を送った。期待通りのスピード型を送ったのである。ところが、2年目の全妹ジェンティルドンナは、マイル向きのスピード馬にはとどまらなかった。ジャパンC連勝,有馬記念、3歳牝馬3冠などG1を7勝。年度代表馬2回である。ドナブリーニは、距離の幅など超えて広がる種牡馬ダンチヒの影響力も確実につたえていた。父ディープインパクトの種牡馬としての優秀性を示したと同時に、輸入牝馬ドナブリーニ(父ベルトリーニ)の評価が上がったことはいうまでもない。

 ラビットラン、アサクサゲンキ姉弟の母アミーリア(父ディキシーランドバンド)は、種牡馬ベルトリーニの2歳下の半妹である。母の父ディキシーランドバンドも、日本でもブルードメアサイアーとして多くの活躍馬を送っている。いま、世界の頂点に立つ「大種牡馬タピット」産駒のラビットランは、牝馬としても「それはそうだろう」という高額だったのだが、類まれな競走能力を持ったタピット牝馬の出現は大きい。

 わたしたちにとっては、「秋華賞でどういう評価にしようか」かもしれないが、10年後、20年後には、おそらく大きく発展を続ける「ラビットラン一族」の牝祖になっているだろう宝物なのである。

 ラビットランの快走にかすんでしまった印象はあるが、「前半46秒4-58秒6」の快ペースで先導し、1分45秒7で粘りこんだカワキタエンカ(父ディープインパクト)は、恵まれての逃げ残りではない。気合をつけ、前半にかなり足を使いながらだった。とくに牝馬のビッグレースに合うクロフネが母の父。秋華賞でこの馬が行くと、京都の内回り2000mはハイレベルのレースになること必然である。

 3着リスグラシュー(父ハーツクライ)は、欲をいえばもう少し身体が成長して欲しかったが、小柄でも非力感はなく、今回も崩れなかった。この馬、最大のカギを握る馬としたことがあるが、牝馬路線の重要レースに全部出走して、大崩れしたことは一度もない。自身がトップクラスのG1候補であると同時に、リスグラシューに先着した馬は、みんなこの世代のビッグネームばかり。この秋も、最高の能力の指針は変わらない。

 6着に沈んだファンディーナ(父ディープインパクト)は、陣営が公言していた通り、本番をにらんでのステップレースらしい仕上げで、一度は先頭に立ったレース内容も前哨戦とすれば十分に合格だろう。スケールの全容が見えるのは本番である。530キロ近い牝馬となっただけに、中間の動向に注目し、直前、1週前の追い切りは凝視したい。

 モズカッチャン(父ハービンジャー)が、どうして和田竜二騎手ではなくなったのか、そこのところは分からないが、この馬もトライアル仕上げとみえた。勝負強さが最大の長所であると同時に、使って良化型も春の成績からはっきりしている。本番は、たたき2戦目、Mデムーロも2度目、脚質から2000mベストだろう。

 ダイワメジャー産駒は、ここにきて父と同じように距離適性の幅を広げて成長する馬が珍しくない。リスグラシューと並んで入線のミリッサも、すんなりならずに9着のレーヌミノルも評価下げ禁物。秋華賞は、桜花賞路線で注目された馬が当然のように巻き返してみせるレースであり、オークスより桜花賞との結びつきが強いことは歴史が伝えている。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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